2022年4月から中小企業もハラスメント防止義務化!SOGIハラ対策は進んでいますか?
2020年6月1日にパワハラ防止法が施行され、2022年4月1日からは中小企業も義務化の対象になります。これに伴い、パワハラ・セクハラなどのハラスメント対策に取り組んでいる企業が増えてきています。ハラスメントへの意識が高まってきている中、「SOGIハラ」という言葉を耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。SOGIハラは、パワハラやセクハラなどと同様に、企業が防止措置を講じなければならないハラスメントにあたります。本稿では、SOGIハラについて解説していきます。
1.SOGIハラとは
2.パワハラ防止法の対象に
3.SOGIハラによる労災認定
4.まとめ
■SOGIハラとは
SOGIとは、性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)を組み合わせた言葉です。性的指向は好きになる相手の性のことをいい、性自認とは自分自身で認識している自分の性のことを意味します。
広く知られているLGBT(QIA+)は、セクシュアルマイノリティ全般を指し、特定の身体的特性、性自認、性的指向を持った人の総称である一方、SOGIはマジョリティやマイノリティに関係なく、全ての人が生まれ持った特性を表すものです。つまり、「SOGIハラ」とは、特定の性的指向や性自認に限定するものではなく、誰もが持っている性的指向・性自認に関するハラスメントのことを指します。
職場で、性的指向や性自認に関する侮辱的な言動を行うことや、SOGIを理由に不利な待遇を強いること、希望を聞き入れなかったりすることに留まらず、うわさ話や陰口などで本人の心を傷つけるなどがSOGIハラに該当します。
職場で起こり得るSOGIハラとして、次の5つが挙げられます。
①特定のSOGIへの差別的な言動や嘲笑、差別的な呼称
②SOGIを理由としたいじめ・無視・暴力
③望まない性別での生活の強要
④SOGIを理由とした不当な異動や解雇
⑤誰かのSOGIについて許可なく公表すること(アウティング)
■パワハラ防止法の対象に
パワハラに関する厚生労働省の指針の中で、SOGIハラは「精神的な攻撃」「個の侵害」という点で、パワハラに該当する可能性があると明記されています。
今まで、SOGIを理由とした差別を禁止する法律はありませんでしたが、パワハラ防止法において明確化されたことで、企業はSOGIハラへの対策を講じることも求められます。
例えば、就業規則にハラスメント防止規定を盛り込むことが、対策の一つとして考えられます。パワハラやセクハラに該当する行為を具体的に示したうえで禁止していることは多いと思いますが、SOGIハラについて「性的指向・性自認に関する言動によるものなど、職場におけるあらゆるハラスメントを禁止する」とのみなっており、詳細を記載していないケースがあります。この規定内容では、SOGIについて触れてはいるものの、「性的指向・性自認」「あらゆるハラスメント」とは何かというところまで具体的にイメージしにくいため、SOGIハラの抑止力にならない可能性があります。SOGIへの理解を深める為には、SOGIの定義や、ハラスメントに該当する行為を具体化した規定を設けることが有効な手段の一つです。
ハラスメントに対する理解が高まってきているとはいえ、SOGIハラについての認識を持っている人はまだまだ多くはないのが現状です。また、言い出せないだけでSOGIに関する悩みを持っている人が回りにいる可能性は十分にあります。このような前提をもったうえで、会社の方針を定めていくことが重要です。
■SOGIハラによる労災認定
パワハラ防止法の施行により、パワハラの定義が法律上規定されたことを踏まえ、心理的負荷による精神障害の労災認定基準の一つにパワハラが明示されました。これは、パワハラに該当する可能性があるSOGIハラも労災認定基準に含まれるということになります。
実際に2021年2月には、精神障害を発症した原因とされるSOGIハラが、パワハラに該当するとして、労災が認められたケースがあります。認定を受けた人は、男性として生まれたものの、幼い頃から性自認は女性であり、性同一性障害特例法に基づき性別を女性に変更していました。しかし、職場で男性のような名前で呼ばれたり、侮辱的な言動がなされたことにより、精神障害を発症したとされています。労働基準監督署は、こうした言動は「SOGIに関する侮辱的な言動」で、パワハラにあたるとして労災認定をしました。
また、他にも性自認に関連した事案として、性同一性障害のトランスジェンダーの女性が、うつ病を発症した原因がSOGIハラであるとして、労災申請をした例があります。性自認が女性であるにも関わらず、上司から男性として扱われたり、身体的特徴に関する侮辱を受けるようになったとされています。こちらはまだ労災を申請した段階ですので、今後の労働基準監督署の判断に注目が集まります。
■まとめ
パワハラ防止法が施行されたことやCSR活動が注目される中において、いまやハラスメント対策は欠かせないものになっています。SOGIハラを含め、ハラスメントを防止することは、より働きやすい職場を作り、企業の生産性アップや企業イメージの向上にもつながります。
汐留社会保険労務士法人では、ハラスメントに関するご相談や就業規則作成のサポートだけではなく、ハラスメント対策に関する研修も承っておりますので、お気軽にお問合せくださいませ。
※パワハラ防止法については、過去コラムで解説しています。
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