テレワークガイドライン改定案に見る、テレワークでの安全衛生のポイント
2021年3月4日、労働政策審議会雇用環境・均等分科会において「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」改定案が示されました。感染症や災害の対策として一般的にも普及が進んだテレワークですが、今回のガイドライン改定案では変更や追加された事項もあり、労務管理全般における内容がガイドラインとして示されています。ガイドライン改定案の内容について、注目すべき安全衛生上のポイントを解説していきます。
1.安全衛生におけるチェックリストが示された
2.安全衛生上、留意すべきポイントとは
3.テレワークを行う際の作業環境について、注意すべきポイントとは
4.まとめ
■安全衛生におけるチェックリストが示された
ガイドライン改定案では、テレワークでの課題となっている労働時間管理、人事評価、人材育成、安全衛生、ハラスメントに関する事項について、大きく変更や追加がされています。
(参考)テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(案)
別紙としてテレワークを実施する場合に、安全衛生上適切な取組がなされているかどうか定期的に点検するために活用いただける、2種類のチェックリストが示されています。
このチェックリストは、安全衛生管理体制の構築や整備について何をすべきか項目で示されているため、チェックすべき項目が分からない場合にも効果的です。このチェックリストの内容から、安全衛生上の留意点について詳しく見ていきます。
①テレワークを実施する場合、安全衛生上留意すべき事項を確認するためのもの
「テレワークを行う労働者の安全衛生を確保するためのチェックリスト【事業者用】」
②テレワークを行う際の作業環境について確認するためのもの
「自宅等においてテレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリスト【労働者用】」
■安全衛生上、留意すべきポイントとは
まずは会社側の安全衛生上の留意点について、チェックリストに記載されている項目は次の通りです。
「テレワークを行う労働者の安全衛生を確保するためのチェックリスト【事業者用】」
1.安全衛生管理体制について
業種や事業規模に応じて、衛生管理者や必要な管理者の選任、衛生委員会等の開催が必要となっている場合は、テレワークとは関係なく対応が必要なことに注意します。
健康相談体制の整備(相談窓口の設置、上司が定期的に心身の状況の変化を把握する等)についてもポイントとなっていますが、従業員の本音や正しい状態が把握できるように、日頃から信頼構築やコミュニケーションを行うことも重要です。
2.安全衛生教育について
安全衛生教育と同時に、オンラインツールやセキュリティに関する教育にも留意すると効果的です。テレワークにおけるワークフローの変化がストレスにつながることもあります。ガイドラインでは「テレワークを導入した初期あるいは機材を新規導入した時等には、必要な研修等を行うことも有用である」とも示されています。
3.作業環境
テレワークの形態に応じて、もう一つの「自宅等においてテレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリスト【労働者用】」も利用して確認をします。
4.健康確保対策について
雇入れ時や定期健康診断、健康診断結果の保管や意見聴取、面接指導等、法律上の義務となっている内容はテレワークと関係なく対応が必要なことに注意します。自宅近くの医療機関での受診を認める等、従業員への配慮もポイントとなりますが、費用負担の取り扱いを変更する場合には就業規則等のルールも忘れずに変更します。
5.メンタルヘルス対策
日頃のメンタルケアやコミュニケーションだけではなく、ストレスチェックでしっかりと状況把握、確認を行います。テレワークによる職場環境の違い、通常の勤務とは異なる点についても留意をします。テレワークに関わらず、新しい制度の導入当初は特別にチェックを行う等、ケアをするのも有効です。
6.その他(コミュニケーションの活性化、緊急連絡体制)
業務面や同僚とのコミュニケーションについても、オンラインツールの導入や環境整備を検討しましょう。
■テレワークを行う際の作業環境について、注意すべきポイントとは
続いて作業環境について、チェックリストに記載されている項目は次の通りです。
「自宅等においてテレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリスト【労働者用】」
1.作業場所やその周辺の状況について
作業場所周辺の整理整頓は気を付けていただく必要があります。テレワーク中にトイレへ行くために離席し、戻ってきてイスに座ろうとした際に転倒した事案で、労災事故として認められたケースがあります。いざという時には労災事故対象になる可能性があることも認識いただくといいですが、まずは事故が起きないように整理整頓は重要です。
2.作業環境の明るさや温度について
疲れにくい環境を作る、作業効率を上げるために明るさや温度も重要となります。設備や環境を整えるために費用負担をお願いする場合について、しっかりとルール化しましょう。
3.休憩等について
ガイドライン改定案では休憩時間のルール、中抜け時間の設定についても示されていますので、労働時間管理に関する内容も参考にします。
4.その他
安全衛生管理体制の整備にあわせて、従業員からの相談や連絡のための窓口も整理しておきます。
■まとめ
テレワークガイドライン改定案の内容について、チェックリストの内容から安全衛生上のポイントを詳しく見てきました。まずは点検項目に従って会社の状況を把握し、適切なテレワークが実施されるように継続的に確認していきましょう。
特にテレワークにおいては、何か起きる前に予兆を把握する仕組みも重要になります。組織マネジメントに課題を感じているような場合も、お問い合わせください。