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2021年4月から中小企業にも義務化!同一労働同一賃金対策の現状

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大企業では既に義務化となっている同一労働同一賃金について、2021年4月からいよいよ中小企業でも義務化となります。非正規雇用労働者の待遇格差の合理性について、これまで多くの訴訟も提訴され、2020年10月の最高裁判例も注目を集めました。今だからこそ確認をしたい同一労働同一賃金対策状況の現状と、ポイントをまとめます。

1.中小企業では約4割で未対応
2.同一労働同一賃金の意外な対策ポイント
3.組織再編時には注意が必要
4.待遇差説明義務に不安がある会社も多い
5.まとめ

■中小企業では約4割で未対応

労働政策研究・研修機構は、令和2年10月1日時点における同一労働同一賃金への対応状況等を調査した「パートタイム・有期契約労働者の雇用状況等に関する調査」の結果を公表しました。この調査結果では、同一労働同一賃金の対応について、対応を検討中、あるいは未定と回答した中小企業は39.4%、大企業でも32.1%に上ることが明らかとなっています。中小企業への同一労働同一賃金義務化が目前と迫った現在でも、まだまだ対応が思うように進んでいない会社は多いのではないでしょうか。

■同一労働同一賃金の意外な対策ポイント

同調査では、同一労働同一賃金義務化となったとしても従来通りで見直しの必要なしと回答した中小企業は35.1%、大企業では16.5%という結果が出ています。パートタイム・有期雇用労働法では、正社員(通常の労働者)と「職務の内容」「職務の内容や配置の変更の範囲」が同一の場合は差別的取扱いが禁止される(均等待遇)という定めとなっているため、これらの要素が異なっているか、非正規雇用労働者を雇用していないケース等が考えられます。ただし職務の内容等が全く関係のない正社員と非正規雇用労働者の状況を比較してしまうと実態とは異なる結果になってしまうため、比較対象となる正社員の範囲についてもきちんと理解しておく必要があります。

【比較対象とする通常の労働者選定の順位】

①「職務の内容」及び「職務の内容・配置の変更の範囲」が同一

②「職務の内容」は同一であるが、「職務の内容・配置の変更の範囲」は異なる

③「職務の内容」のうち、「業務の内容」又は「責任の程度」のいずれかが同一

④「業務の内容」及び「責任の程度」がいずれも異なるが、「職務の内容・配置の変更の範囲」が同一

⑤「業務の内容」「責任の程度」「職務の内容・配置の変更の範囲」がいずれも異なる(職務の内容が最も近いと考えられる労働者を選定する)

■組織再編時には注意が必要

IPOにおいて待遇決定や人事考課は、個人事業のように経営者の一存で決定されるものではなく、公正・公平に評価されるような仕組みが必要となります。契約社員やパートタイマー等の非正規雇用労働者に対して評価制度が整っていない場合には、これを機に同一労働同一賃金を意識して制度導入を検討しましょう。

またIPOでは「成長戦略」や「グループ会社の整理」を目的として、M&Aの手法を活用することは良くあります。合併、会社分割等、組織再編を伴う手法を活用する場合には、より一層注意が必要となります。組織再編により、今まで雇用をしていなかった雇用形態や職種の従業員を受け入れることとなった場合、同一労働同一賃金の対策が必要となる、比較対象労働者の認識を改めなければならなくなる、というような可能性が出てきます。さらに企業風土が異なる人員を受け入れることによって、今までは大きく問題とならなかった待遇格差が明るみとなる、受け入れ前の会社が採用していた待遇や制度を受け入れ先でも継続するのかどうか、という点が問題となることがあります。今までは経営スピードを意識して、まずは組織再編の意思決定を行い、後から統合プロセスに入れば良かったことが、統合前にしっかりと人事労務に関するDDを行い、時間をかけて統合プロセスをイメージしなければならなくなることも考えられます。

■待遇差説明義務に不安がある会社も多い

再び同調査では、パートタイム・有期雇用労働法で義務付けられている待遇差やその理由に関する説明義務について、説明できる場合と、説明できない場合があると思う、と回答した企業が29.4%という結果となっており、待遇差説明義務に関して不安を感じている会社も多いようです。

公平で納得感のある説明を行うためにはしっかりとした根拠が必要であり、待遇差説明義務を安心感のあるものにしていただくためには、きちんとした職務分析・職務評価も活用いただきたいと思います。
【中小企業向け】同一労働・同一賃金対策プランのご紹介

■まとめ

同一労働同一賃金対策状況の現状から、今一度注意したいポイントをまとめました。多様な人材を雇用し、評価制度を長く運用している傾向がある大企業の方が、対策が大変であることは多いです。ただし事業や組織体制が柔軟に、早いスピードで変化していく中小企業についても、十分に意識すべき内容であることは気を付けなければなりません。

将来的な対策方法を誤らないように、同一労働同一賃金についても注意すべきポイントを理解して、今だからこそ改めて現状把握と確認をしていただきたいと思います。

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