令和3年5月以降の雇用調整助成金特例措置は?新たな雇用・訓練パッケージ
新型コロナウイルスの影響による失業者数は8万人を超え、2020年の平均完全失業率はリーマンショック以来11年振りに上昇する等、雇用情勢は依然として厳しい状態が続いています。その中で、厚生労働省は雇用の下支え、雇用創出効果を円滑に発現していくために令和2年度第3次補正予算を活用した「新たな雇用・訓練パッケージ」を公表しました。会社や従業員にとっても注目度が高いこの取り組みについて、内容を解説します。
1.雇用調整助成金の特例措置による雇用維持
2.大企業のシフト制労働者等への対応
3.求職者支援制度への特例措置の導入
4.まとめ
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【YouTube】雇用調整助成金の特例措置の縮減について
■雇用調整助成金の特例措置による雇用維持
まずは昨年4月以降、従業員の雇用維持に大きく貢献し、注目される雇用調整助成金の特例措置の動向です。現行の緊急事態宣言を前提として、現行の特例措置は4月末まで継続されるということが決定しました。5月以降は原則的な措置を段階的に縮減し、7月以降は雇用情勢が大きく悪化しない限り、原則的な措置及び特例措置を更に縮減されることが決定しています。
【現行の特例措置の取扱い】
中小企業 | 大企業 | いつまで | |
日額上限 (日・人) |
15,000円 | 4月末まで
(緊急事態宣言が2月中に全国で解除された場合も4月末まで継続) |
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助成率 | 最大10/10 | 最大3/4 | |
最大10/10
※全国の特に業況が厳しい企業 |
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最大10/10
※緊急事態宣言地域の営業時間短縮等に協力する飲食店等 |
緊急事態宣言解除月の翌月末まで |
【5月~6月の特例措置】
中小企業 | 大企業 | |
日額上限 (日・人) |
13,500円 | |
15,000円 ※全国の特に業況が厳しい企業 |
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15,000円 ※感染拡大地域特例(まん延防止等重点措置対象地域があれば、営業時間短縮等に協力する飲食店等を対象) |
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助成率 | 最大9/10
※解雇等を行っていない場合 |
最大3/4 |
最大10/10
※全国の特に業況が厳しい企業 |
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最大10/10
※感染拡大地域特例(まん延防止等重点措置対象地域があれば、営業時間短縮等に協力する飲食店等を対象) |
※2021年3月26日更新
厚生労働省より5月・6月の雇用調整助成金の取扱いについて公表されたため、未定であった大企業に適用される助成率を更新しました。
※2021年5月6日更新
5月・6月の雇用調整助成金の特例措置について、内容をまとめたリーフレットが公表されました。
令和3年5月・6月の雇用調整助成金の特例措置について(リーフレット)
※2021年5月29日更新
厚生労働省は、7月末まで雇用調整助成金の特例措置を延長する方針を固めました。
加えて、一定の大企業と中小企業について、2021年1月8日以降、4月末までの休業等については、2021年1月8日以降の解雇の有無等により適用する助成率を判断するとして、雇用維持要件が緩和されています。
特例措置は段階的に縮減され、重点的に支援が必要となる地域や業種への対応に切り替わっていくことになりますが、現行の特例措置が4月末まで維持されることは、雇用維持に大きな影響を与えるかと思います。
■大企業のシフト制労働者等への対応
大企業に勤める従業員については、会社による休業手当支払いや雇用調整助成金の利用がなければ、なかなか救済がされないという点が問題視されていましたが、大企業に勤めるシフト制等の勤務形態で働く従業員が休業手当を受け取れない場合に、休業支援金・給付金の対象とされることが定められました。
対象の従業員は「労働契約上、労働日が明確でない方(シフト制、日々雇用、登録型派遣)」とされ、限定的な範囲ではありますが、休業期間に応じて給与の補填を受けることができます。大企業に勤める従業員への支援については、待ち望まれていた内容です。
2021年1月8日以降の休業:休業前賃金の80%
※例外的に2020年11月7日以降に時短要請を発令した都道府県は、その発令時以降
2020年4月~6月末までの休業:休業前賃金の60%
■求職者支援制度への特例措置の導入
9月末までの時限措置として、職業訓練受講給付金の収入要件の特例措置(通常は月収入8万円以下→シフト制で働く方等は月収入12万円以下に引き上げ)、出席要件の緩和(働きながら訓練を受ける場合、出勤日をやむを得ない欠席とする)も定められています。働きながら職業能力を向上させる支援として、強化が予定されています。
雇用・訓練パッケージとは別となりますが、令和3年度分の助成金の見直しにおいて、人材開発支援助成金(教育訓練休暇付与コース)の見直しも予定されています。内容としては長期の教育訓練休暇制度について支給要件の緩和を行うというもので、教育訓練休暇の取得日数の下限が120日以上から30日以上に変更される見込みになっています。もともとは短期留学等、従業員のキャリア形成やリカレント教育を後押しするための支援制度でしたが、今後や休業や雇用維持と併用した職業能力向上支援につなげていただけるかもしれません。
■まとめ
厳しい雇用情勢の中、期待される新しい雇用・訓練パッケージの概要を見てきました。このような状況だからこそ、支援制度を有効活用し、雇用維持や経営環境の悪化を乗り越える手段として利用いただきたいと思います。