11月は「労働保険未手続事業一掃強化期間」です!
厚生労働省では、11月1日から30日までの1か月間を「労働保険未手続事業一掃強化期間」と定めています。
労働保険制度について正しく理解し、正しく手続きを行いましょう。
1.労働保険(労災保険・雇用保険)とは
2.労災保険と雇用保険の加入要件の違い
3.労働保険料(労災保険料・雇用保険料)はだれが負担する?
4.労災保険未手続の場合の費用徴収
5.まとめ
■労働保険(労災保険・雇用保険)とは
労働保険(労災保険・雇用保険)は、労働者の保護及び雇用の安定を図ることを目的とした、国が運営する社会保険制度の1つです。
正社員、パート、アルバイトなどにかかわらず、労働者を1人でも雇っている事業主に加入が義務付けられています。
※5人未満の労働者を使用する個人経営の農林水産の事業については、強制適用事業場から除かれています。
※強制適用以外の事業場でも、要件を満たせば労災保険と雇用保険に加入することができます(任意加入制度)。
●労災保険(労働者災害補償保険)
労働者が仕事(業務)や通勤が原因で負傷した場合、また、病気になった場合や不幸にもお亡くなりになった場合に、被災労働者や遺族を保護するための給付等が行われます。
●雇用保険
労働者が失業した場合や働き続けることが困難になった場合、また、自ら教育訓練を受けた場合に、生活・雇用の安定と就職の促進を図るための給付等が行われます。
■労災保険と雇用保険の加入条件の違い
労災保険と雇用保険は、加入条件に違いがあります。
労災保険は、会社と雇用関係がある労働者は、勤務が1日だけ、1時間だけであっても、全員強制加入(会社の労災保険に加入)となります。
雇用保険は、労災保険と違って加入条件があります。雇用保険に加入する必要があるのは、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ、31日以上引き続き雇用されることが見込まれる労働者です。
労災保険は誰でも強制加入、雇用保険は全員に加入義務があるわけではないという点を理解しておきましょう。
■労働保険料(労災保険料・雇用保険料)はだれが負担する?
労災保険の保険料は、全額が事業主負担となっており、労働者は負担しません。事業主が労働者に支払っている賃金総額と労災保険料率により保険料を計算します。労災保険料率は、業種により異なり、災害の発生率を基準として1000分の2.5から1000分の88の間で定められています(令和4年度)。
雇用保険の保険料率は、次の表のとおり、業種により3つに分かれています。
出典:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークパンフレットより
雇用保険料は労働者と事業主の双方が負担します。労働者負担の雇用保険料は、その月の賃金総額に上記の料率をかけて計算し、毎月の給料から天引き(徴収)されます。事業主は、労働者から徴収した分と事業主負担分とを合わせて、国に納付します。
■労災保険未手続の場合の費用徴収
労災保険の成立手続を長期間怠った、また、成立手続を行わない事業主等に対しては、最終的な手段として、国の職権による成立手続及び労働保険料の認定決定が行われます。その際、事業主は、さかのぼって労働保険料を徴収されるほか、あわせて追徴金が徴収されます。
また、事業主が故意又は重大な過失により労災保険の成立手続を行わない期間中に労働災害や通勤災害が発生し、労災保険給付が行われた場合は、事業主から(1)~(2)を徴収することになっています。
(1) 最大2年間遡った労働保険料及び追徴金(10%)
(2) 故意又は過失により、労災保険給付額の40%又は100%
事業主はさかのぼって労働保険料を徴収(あわせて追徴金が徴収)されるほかに、労災保険給付に要した費用の全部又は一部が徴収されます。
■まとめ
労働者を1人でも雇っていて、まだ労働保険の成立手続きを行っていない事業主の方は、速やかに手続きを行いましょう。
労災保険の加入義務があるにもかかわらず未手続のままでいると、労働保険料以外の追徴金や労災保険給付に要した費用など、きちんと手続きをしていたら本来払わなくていいはずのものまで徴収されることになるかもしれません。
労働保険制度の内容をしっかりと理解したうえで、対応することが求められています。