2024年最低賃金改定!中小企業の賃上げと助成金等の支援策
中小企業は日本経済において重要な役割を担っておりますが、多くの課題にも直面しています。特に、人手不足や資金繰りの問題、そして競争力の維持などが代表的な課題です。2024年8月29日には厚生労働省が地方最低賃金審議会が答申した地域別最低賃金額を発表し、大幅な最低賃金引上げによってさらなる負担が懸念されています。答申での全国加重平均額は1,055円となり、多くの企業が経営資源の制約と賃上げによるコスト負担に直面しています。本稿では中小企業の賃上げと、最低賃金引き上げによる課題や対策について解説します。
1.最低賃金引上げの背景と意義
2.中小企業が直面する具体的な課題
3.中小企業のための対策と支援策
4.まとめ
■最低賃金引上げの背景と意義
最低賃金の引上げは、労働者の生活向上を図るために不可欠な政策です。経済の健全化や労働市場の活性化を目指す中で、2024年度の答申での全国加重平均額は1,055円となり、その引上げ幅は前年度比51円で昨年を超える引き上げとなっています。これは、インフレの影響や労働者の購買力向上を目指すとともに、所得格差の是正を図るための意義ある施策です。
しかし、中小企業にとって賃金の引上げは大きな負担となり得ます。特に、業績改善がない状況下での防衛的賃上げが増加している中、企業の経営資源に対する圧迫が顕著です。したがって、企業は効率的な業務プロセスの見直しや、助成金の活用などの対応策を求められています。
■中小企業が直面する具体的な課題
1.経営資源の制約
中小企業は大企業と比較して経営資源が限られていることが多いです。特に資金力や人的資源の不足が顕著で、これらの制約が最低賃金引上げの対応に影響を及ぼします。例えば、運転資金が限られている中小企業では、急な賃上げに対応するための追加資金を捻出することが難しい場合があります。
2.賃上げによるコスト負担
最低賃金の引き上げは、多くの中小企業にとって大きなコスト負担となります。賃金を引き上げることで労働者の生活水準は向上しますが、企業側にはその分の財務負担がのしかかります。最低賃金対応だけではなく、採用競争力確保のためにも賃上げの必要に迫られる中、このコスト増加をどのようにカバーするかが中小企業の大きな課題です。
3.人手不足と賃上げ
人手不足が深刻化している中、賃上げは労働者の採用やリテンションのための一つの有効手段ですが、一方で中小企業にとっては大きな負担となります。防衛的な賃上げに踏み切る企業も増えておりますが、業績改善なき賃上げがまだまだ行われている現状では、賃金上昇と業績悪化のバランスをどう取るかが難しいところです。
4.生産性向上の課題
賃上げを持続可能にするためには、生産性の向上が不可欠です。しかし、中小企業では生産性向上を実現するためのリソースが不足していることが多く、業務プロセスの見直しや効率化のための投資が難しいケースが見られます。このような生産性や業績が改善しない状況下でも、人材確保のために賃上げをせざるを得ないという実情も増えてきています。政府や自治体が行っている助成金や支援策を駆使して、生産性向上に取り組むことが求められています。
■中小企業のための対策と支援策
政府や自治体は中小企業の賃上げを支援するために、さまざまな支援策を講じています。例えば、厚生労働省は助成金制度を設けており、賃金引き上げとともに生産性向上に取り組む中小企業に対して助成を行っています。また各地方自治体も独自の支援策を展開しており、例えば、業務プロセスの見直しや効率化を支援する施策を行っている自治体もあります。
1.生産性向上のための取り組み
最低賃金の引き上げが中小企業に与える影響を軽減するためには、生産性の向上が不可欠です。具体的には、業務プロセスの見直しや設備投資、ITツールの導入による業務効率化が考えられます。例えば、クラウドサービスやAI技術を活用することで、作業の自動化や情報管理の効率化が進みます。これにより、生産性が向上し、賃上げによるコスト負担を和らげることができます。
代表的な賃上げや生産性向上のための助成金は次のようなものがあります。
業務改善助成金 | 生産性向上に資する設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行うとともに、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成 |
働き方改革推進支援助成金 ※4つのコースを用意 |
生産性を向上させ、時間外労働の削減、年次有給休暇や特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組む場合、環境整備や設備投資などにかかった費用の一部を助成 |
東京都 中小企業デジタルツール導入促進支援事業 | 東京都内中小企業のデジタルツール導入を支援し、デジタルツール導入にかかった費用の1/2以内、最大100万円を助成 |
また、従業員のスキルアップを図るための教育研修も重要です。これにより、従業員が高付加価値な業務に従事しやすくなり、企業全体の生産性が向上します。代表的なものに「人材開発支援助成金」があります。
2.賃上げ促進税制の利用
中小企業が賃上げに取り組む際には、「賃上げ促進税制」の利用も有効です。この税制は、賃上げを実施した企業に対して税額控除を認めるもので、企業の財政的な負担を軽減します。具体的には、賃金総額を一定割合引き上げた場合、その引き上げ分に対する法人税や所得税の一部が控除されます。これにより、中小企業は経費削減の一環として、積極的に賃上げに取り組むことができます。
■まとめ
将来においても最低賃金の引き上げが継続的に行われる可能性が高く、人手不足に対応するためにも賃上げは今後も重要になっていくと思われます。
持続的な賃上げを実現するためには、コスト負担の軽減と生産性の向上が重要になってきます。政府や自治体が提供する助成金や支援策をうまく活用し、対策を検討していきましょう。
どうしても経営資源が不足しがちな中小企業においては、業務効率化や設備投資等の環境整備だけではなく、人的資本を最大限活用するための人事戦略も欠かせません。最低賃金引き上げによる賃金水準の増加、賃上げによって公正な評価制度や賃金テーブルがより一層重要になる等、人事制度に関わる課題も増えてきています。
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