円滑な職場復帰に効果的!導入が進められている試し出勤制度(リハビリ出勤制度)
メンタルヘルス不調により休職する従業員が増えています。
休職をしていた従業員が職場復帰をするにあたり、すぐに通常勤務に復帰させるのではなく試し出勤制度(リハビリ出勤制度)を導入する企業が増えてきています。今回は休職者の職場復帰を円滑に行うための試し出勤制度について、運営上の注意点を詳しく解説します。
1.試し出勤制度(リハビリ出勤制度)とは
2.試し出勤制度(リハビリ出勤制度)の種類
3.試し出勤制度(リハビリ出勤制度)の実施時期
4.試し出勤制度(リハビリ出勤制度)の注意点
5.まとめ
■試し出勤制度(リハビリ出勤制度)とは
試し出勤制度とは、正式な職場復帰の前に試験的に出勤をさせることにより、職場復帰を円滑に進めることを目的とした制度です。会社にとっては職場復帰の可否の判断材料に、また、長期休業している従業員にとっては職場復帰の不安の緩和、自分自身の状況の確認、さらには、業務に徐々に慣れるための復職準備期間にもなります。
■試し出勤制度(リハビリ出勤制度)の種類
試し出勤の制度として、厚生労働省が公開している「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」から「模擬出勤」・「通勤訓練」・「試し出勤」の3つの種類をご紹介します。
1.模擬出勤
職場復帰前に、通常の勤務時間帯の中で短時間、又は通常の勤務時間内で、デイケア等を利用して模擬的な軽作業を行ったり、グループミーティングを行ったり、図書館等で時間を過ごしたりすることをいいます。
2.通勤訓練
職場復帰前に自宅から職場付近まで通勤経路で移動し、職場付近で一定時間過ごした後に帰宅することをいいます。
3.試し出勤
職場復帰前に職場復帰等の判断を目的として、本来の職場等に試験的に一定期間継続して勤務することをいいます。
■試し出勤制度(リハビリ出勤制度)実施時期
試し出勤制度の実施時期としては、休職期間中、或いは復帰以後、いずれかでの実施となります。
1.休職期間中に実施する場合
休職期間中に行う試し出勤制度は、あくまで休職期間中のリハビリ的な出勤として労務の提供を行わないことが原則のため、賃金が発生しません。ただし仕事ができるかどうかを見るために業務を命じた場合には、その労務に対して賃金支払いの義務が発生しますので注意が必要です。
また休職期間中の試し出勤制度は労務の提供が行われないことが通常であるため、自宅から会社までの通勤途中、又は会社施設内でケガ等をしたとしても、労災保険が適用されない可能性があります。
休職期間中に傷病手当金の受給をしていた場合は、「療養のため労務に服することが出来ない」ことを証明するために医師の意見書等が必要となりますが、労務不能かどうかの判断は保険者によることとなり、試し出勤期間中に傷病手当金の受給が可能であるかどうかは保険者に確認する必要があります。
2.復職以後に実施する場合
職場復帰後に実施する試し出勤制度(リハビリ出勤制度)は、労務提供を行うことを前提として休職状態を解除したこととなるので、原則として労務の提供に対して賃金を支払う必要があります。
■試し出勤制度(リハビリ出勤制度)の注意点
その他、試し出勤制度については次のような注意点があります
①産業医・主治医の意見を聞き、試し出勤等が可能かどうかを確認したうえで開始する。
②常に従業員の様子を見ながら、勤務時間・業務内容について柔軟に対応する。
③勤務時間の短縮や業務の質や量を調整している場合、賃金支払い方法(月給制から時給制等)、労務負荷に応じた賃金の減額をすることは可能であるが、お互いに十分に話し合いの上、労使合意の上で行う。
試し出勤実施にあたり、実施計画や実施中の状況をしっかりと共有して進めることが効果的です。
■まとめ
本格的な職場復帰を目指す前に試し出勤制度(リハビリ出勤制度)を導入することで、従業員の職場復帰を円滑に進める事が出来ます。
試し出勤制度(リハビリ出勤制度)の導入にあたっては、専門家である社会保険労務士に相談し、サポートを受けて進めていくのが良いでしょう。