勤怠管理クラウド化に使える!働き方改革推進支援助成金「労働時間適正管理推進コース」が創設
2020年4月1日に労働基準法が一部改正され、「賃金請求権の消滅時効期間」と「賃金台帳等の記録の保存期間」が延長となりました。これらの法改正に対応し、労務・労働時間の適正管理を実現するための環境整備に取り組んでいただくため、今年から新しく働き方改革推進支援助成金「労働時間適正管理推進コース」も創設されました。本稿では、法改正のおさらいと注目の助成金内容を解説します。
1.賃金請求権の消滅時効期間延長
2.賃金台帳等の記録の保存期間延長
3.働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)
4.効果的な活用方法とは?
5.まとめ
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働き方改革推進支援助成金、労働時間適正管理推進コースについて
■賃金請求権の消滅時効期間延長
2020年4月1日以降に支払期日が到来する全ての賃金請求権について、消滅時効期間が5年(当分の間は3年)に延長されています。現在も消滅時効期間が5年である退職金請求権については変更ありません。
時間外労働や休日労働等の残業に対する割増賃金、有給休暇中の賃金についても対象となりますが、休業手当も対象となることに注意が必要です。ちょうど昨年4月は新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が大きな影響を与えておりましたが、休業期間中の賃金が適正に支払われていない場合、3年間は休業手当の請求権が存在することになります。
■賃金台帳等の記録の保存期間延長
法律で保存すべき期間が定められている賃金台帳等の記録の保存期間も、5年(当分の間は3年)に延長されています。
対象は労働者名簿、賃金台帳、雇用契約書、出勤簿・タイムカードの記録等です。紙で管理・保存しているというようなケースもまだまだ多いと思いますが、保存期間が延長されると管理コストも膨大となります。保存期間の延長を受けて、社内での管理方法変更や電子データ化についても検討しなければならなくなりました。
■働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)
この法改正の内容を受けて、適正に労務・労働時間管理を行っていただくために、2021年4月から「働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)」という新しい助成金が創設されました。この助成金は次の成果目標を達成した場合、目標達成のための取り組みに要した経費の一部を受給することができます。
働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)のご案内
●成果目標
①新たに勤怠(労働時間)管理と賃金計算等をリンクさせ、賃金台帳等を作成・管理・保存できるような統合管理ITシステムを用いた労働時間管理方法を採用すること
②新たに賃金台帳等の労務管理書類について5年間保存することを就業規則等に規定すること
③「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に係る研修を労働者及び労務管理担当者に対して実施すること
●支給額
対象経費の合計額×補助率3/4(最大4/5)
※上限額50万円(賃金引き上げ達成時の加算あり、最大290万円)
■効果的な活用方法とは?
現在も「勤怠管理は紙やExcelを利用している」「勤怠管理を給与計算や賃金台帳作成に自動連携する仕組みがない」という場合に、この助成金はおすすめです。
1分単位での労働時間把握、テレワーク、残業時間の上限規制や年5日の有給休暇取得義務化等、労働時間把握は複雑化しており、勤怠管理をシステム化することは必要不可欠になっています。また勤怠管理や給与計算システムをクラウド化、リンクさせることにより業務の効率化、生産性を向上させることもできます。
今回の助成金が設けられた背景には、まずは記録の保存期間延長に対応できる環境を浸透させることで、賃金請求権の消滅時効期間を5年に引き上げる準備にしていると考えられます。ゆくゆくは予定されている賃金請求権の消滅時効期間延長に対応するためにも、今から労働時間適正管理や生産性向上の環境を整えましょう。
■まとめ
賃金請求権や記録の保存に関する法改正のおさらいと、注目の助成金内容を解説しました。
IT補助金はプロセス数の選択や要件に制約がありますが、勤怠管理システムや給与計算業務の効率化が目的であれば、働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)は活用いただけやすいかと思います。IT導入補助金やその他の助成金制度と比較選択し、効果的にに活用して、労働時間や労務管理の適正化を進めていただければと思います。
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