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企業に求められるメンタルヘルスの対応

新型コロナウイルス感染症、テレワークの増加、様々なハラスメント、長時間労働による過労死など労働環境問題や働き方の変化は働く人にとって大きな影響を与えています。厚生労働省が令和4年7月5日に公開した「令和3年労働安全衛生調査」によると、令和2年11月1日から令和3年10月31日の期間でメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた事業所の割合は10.1%となっています。令和2年調査では9.2%だったので、前年より増加して10社に1社でメンタルヘルス不調者が発生していることになります。
また、若年層の死亡原因第1位である自殺ですが、令和2年の自殺者総数は21,007人でした。そのうち、勤務問題が原因である自殺者は1,935人であり、1割近くが仕事に関係していました。実際にはうつ病などによる自殺は健康問題に分類されていますので、実際に仕事を原因とする自殺者はもっと多いと推測できます。このようにメンタルヘルス不調は社会的な損失を生みだしています。この課題を解決するためにも企業は日頃から従業員の心と身体の健康に対して、ストレスチェック制度や産業医制度などを活用して改善に向けた積極的な取り組みを行っていく必要があります。

1.ストレスチェック制度とは
2.産業医制度とは
3.まとめ

■ストレスチェック制度とは

平成27年5月に労働安全衛生法の改正により創設されたストレスチェック制度は、メンタルヘルス不調を未然に防ぐために、心理的な負担の程度を把握する検査(ストレスチェック)とその結果に基づく医師の面接指導等を行う制度のことです。
令和4年3月に厚生労働省から公開された「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」によると制度創設から5年以上が経過し、ストレスチェックを行う企業は年々増加し全事業所における8割以上が導入しています。導入の効果として、企業側は「社員のメンタルヘルスセルフケアへ関心の高まり」「メンタルヘルスに理解のある風土の醸成」「メンタル不調者の減少」など効果を実感しているようです。従業員側でも「自身のストレスを認識するようになった」との回答が多くなっています。このことからストレスチェック制度は、一定の効果を示していることがわかります。
しかし、一方で課題もあります。ストレスチェックが義務化されていない小規模企業では導入率が一気に下がり4割程度となります。さらに単独事業所しかない事業所では1割以下と企業規模によって、大きな差がある状況となっています。また、制度を導入している企業でのチェックの結果、高ストレスを感じていることが判明している従業員も、会社にマイナスにとられることを恐れ、産業医面談を希望しないといったことも発生しています。
このことから、さらなるストレスチェック制度の理解と、会社からの適切なメッセージが社員に届くように改善に取り組む必要があります。

■産業医制度とは

産業医は常時50人以上の事業所で、労働者の健康管理等を行うものとして、医師で健康管理等の知識を持つものを選任する必要があります。産業医の職務内容は次のとおりです。

(1)健康診断、面接指導等の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置、作業環境の維持管理、作業の管理等労働者の健康管理に関すること。
(2)健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。
(3)労働衛生教育に関すること。
(4)労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。

少なくとも月1回作業場等を巡視し、作業方法や衛生状態に有害の恐れがあるときは、直ちに労働者の健康被害を防止するため必要な措置を講じる必要があります。
また、下記に該当する企業は、その事業場に専属の産業医を選任する必要があります。

  • 常時1,000人以上の労働者を使用する事業所
  • 一定の有害業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業所

具体的に産業医が面談を行うケースとして、長時間労働に対する面接指導があります。これは長時間労働が脳血管疾患及び虚血性心疾患等の発祥と関連性が医学的に高いとされているからです。
労働時間制度により基準は異なるのですが、大きな基準とるのが一か月あたりの時間外労働時間80時間です。労働者が時間外労働時間80時間を超えた場合で疲労蓄積があり、面接希望の申し出を行った場合、医師による面接指導を行うことが義務付けられています。
そのため事業主は月の労働時間を適正に管理し、労働者が働いた時間を本人に通知する必要があります。
そして医師の面接指導を行ったときには事業主はその結果を聴取し、必要な対応をとる必要があります。メンタルヘルス不調が把握されたときには、必要に応じて精神科医等と連携するなど求められます。また、メンタルヘルス不調になった従業員に不利益な対応をとってはいけません。

■まとめ

会社経営において事業を大きくするために従業員は不可欠な存在です。そのため、従業員には心身ともに健康な状況で、安心して効率的に働ける職場環境を作っていく必要があります。
数年前、「マインドフルネス」という手法が話題になり、アメリカの大手企業であるGoogleやAppleが導入しているということで注目を集めました。瞑想などを行い、心を落ち着けることで、ストレスを軽減や集中力をアップするというものです。Googleは導入の結果、生産性が向上したそうですが、メンタルヘルスを重要な経営のファクターとして行動した結果ではないかと思います。企業にとって従業員のストレスを低減させることができれば、生産性アップや社内の人間関係の改善などにもつながってくると思います。そうすれば離職率の減少や、採用で有利な魅力的な会社にすることができるのではないでしょうか。

【参考】

こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト(厚生労働省)

ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等(厚生労働省)

長時間労働による医師による面接指導(厚生労働省資料)

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