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令和3年度一般賃金水準が公表!来年はどう対応する?派遣労働者の同一労働同一賃金

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新型コロナウイルス感染症が広がり始めた2020年4月に改正労働者派遣法が施行され、派遣労働者の同一労働同一賃金が義務化されました。新型コロナウイルス感染症により雇用環境が悪化し、派遣労働者の雇止めや休業等が問題になっている中で、派遣労働者の同一賃金は始まり、ついに半年が経過しました。

様々な混乱の中始まった制度ですが、いよいよ10月21日に令和3年度に適用される一般賃金水準が公表されました。派遣労働者の同一労働同一賃金について、来年はどのような対応が必要になるのでしょうか?

1.派遣労働者の待遇決定方式は2パターン
2.労使協定方式に与える影響、必要な対応とは
3.新型コロナウイルス感染症の影響による例外措置
4.実務や労使協定内容の注意点
5.まとめ

■派遣労働者の待遇決定方式は2パターン

おさらいとして、派遣労働者の同一労働同一賃金の対応について、待遇決定方式は派遣先の従業員と待遇を比較する「均等均衡方式」、同じ地域の同種の業務に従事する従業員(一般賃金水準)と待遇を比較する「労使協定方式」の2パターンから選択する必要があります。どちらかの方式によって派遣労働者の待遇を決定することにより、同一労働同一賃金を達成しなければなりません。

労使協定方式では、一般賃金水準と待遇を比較することになりますが、この一般賃金水準は毎年見直しが行われます。今回は来年度に適用される一般賃金水準が公表された、ということになります。

■労使協定方式に与える影響、必要な対応とは

厚生労働省が公表した派遣元企業に対するアンケート調査では、全体の約9割を占める多くの派遣元企業が労使協定方式を採用していることが明らかとなりました。そのため、今回の一般賃金水準の公表は、ほとんどの企業に影響があります。

一般賃金は「基本給・賞与・手当」「通勤手当」「退職金」の3つに分けて考えられます。退職金制度を導入せず、退職金前払い方式を選択し時給に上乗せしている場合等の数値は6%で、前年度から変更はありませんでした。ただし通勤手当を別途実費支給ではなく、定額支給の通勤手当相当額を時給に含めている場合の金額は、前年度の72円から74円へ引き上げられています。また一部の職種や地域を除き、全体的に賃金水準は増加の傾向がありますので、通勤手当や基本給・賞与・手当の水準に注意して、現状の労使協定の点検が必要です。もちろん令和2年度よりも一般賃金水準が下がったという職種や地域もありますが、派遣労働者の待遇改善、長期的なキャリア形成に配慮した雇用管理という労使協定の目的に鑑み、一般賃金水準が下がったからといって待遇を引き下げるのではなく、現行の賃金水準を基準として労使で十分に議論して待遇を決定するよう求められています。

■新型コロナウイルス感染症の影響による例外措置

一般賃金水準は、統計調査等を活用し次年度に適用される分は毎年6~7月に公表されるということが以前より周知されていましたが、令和3年度適用分が公表されたのは10月でした。経済情勢の悪化を理由として、2020年10月からの最低賃金の引き上げが大幅に抑制されたことは記憶に新しいですが、同じように新型コロナウイルス感染症が雇用や経済に与える影響を慎重に見極めた上で検討され、公表が延期されたという背景があります。

加えて厳しい雇用情勢が続いていることを踏まえ、一定の要件を満たす場合は令和2年度に適用される一般賃金水準を引き続き適用することができる例外措置が設けられています。厳しい雇用情勢の中であっても、派遣労働者の雇用確保、維持をしていただくことが目的であり、派遣先の希望や使用者の都合によって、選択できるものではないという点には注意が必要です。

※2021年1月7日更新
厚生労働省より、例外的取り扱いを利用する場合の提出様式が公表されました。
労使協定方式における現下の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う労働市場への影響等を踏まえた取扱いに関する提出様式について(令和2年12月25日職発1225第3号)
提出様式(PDF版)

■実務や労使協定内容の注意点

検討し締結した労使協定が実態とあっているか、という点も注意が必要です。

局長通達の別添(賃金構造基本統計調査や職業安定業務統計)を利用して職種を選択し、基本給・賞与・手当などを算定するにあたり、派遣労働者が従事する中核的業務をもとに、最も近いと考えられる職種を選択します。この職種の選択を実際に従事する業務とは関係なく、現状の派遣労働者の給与水準に合わせるためや、待遇を引き下げる目的で選択することはもちろん許されません。

また今回の一般賃金水準の公表と同時に、労使協定の締結当事者となる労働者過半数代表者向けのパンフレットが公表されています。過半数代表者の選定手続きは適切であるかどうかの確認ポイントだけでなく、上記のような職種の選択、通勤手当や退職金の支払い方法といった労使協定の内容が適切であるか見極めるためのポイントや、派遣労働者が自身の待遇が適正かどうかについてどこを見るべきかのポイントが示されています。派遣労働者だけでなく、労務管理担当者も十分に確認しておくといいでしょう。

※2020年12月8日更新
12月4日、厚生労働省HPに派遣労働者向けの「派遣で働くときの同一労働同一賃金チェックリスト」が公開されました。
派遣で働くときの同一労働同一賃金チェックリスト
派遣労働者目線で、派遣労働者の同一労働同一賃金について対応しなければならないことが分かりやすくまとめられています。
解説動画もあわせて公開されており、労務管理担当者も確認しておくといいでしょう。

■まとめ

派遣労働者の同一労働同一賃金対応については、まだまだ完全な整備ができていない、運用面で不安があるという会社も多く見受けられます。令和3年度の一般賃金水準の公表があり、来年度に向けた見直しを迫られる中で、改めて求められる対応のチェックを行うことをお勧めします。

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