アメリカでの勤務経験がある方必見!米国年金制度の概要と受給手続き
海外赴任等により、アメリカで勤務された経験がある方も多いかと思います。アメリカにも年金制度はありますが、短期間の就労である場合「海外での年金制度は自分には関係ない」と考えている方も多いのではないでしょうか?「退職年金がもらえるはずはない」と諦めている方もいらっしゃるかと思います。社会保障協定 (いわゆる日米年金協定)により、日本の年金加入期間を合算することで、アメリカでも年金の受給資格を得ることができる可能性があります。さらに年金受給の手続きは日本の年金事務所で行うことが出来るため、心当たりのある方はご確認いただくことをおすすめします。本稿では、アメリカの退職年金の概要および受給に必要な手続きの流れについて解説します。
1.アメリカ年金制度の概要
2.退職年金受給のための手続き
3.申請書類提出後の流れ
4.FAQ
5.まとめ
■アメリカ年金制度の概要
アメリカの年金制度の概要は次の通りです。
- アメリカの年金加入期間が1年6か月(6クレジット)以上で、かつ日本の年金加入期間を通算して10年以上になる場合は、アメリカの年金制度から退職年金を受け取ることができます。
- 退職年金の満額受給開始は、年齢によって異なります(段階的に67歳までに引き上げ)。
- 退職年金受給者に65歳以上の配偶者(段階的に67歳までに引き上げ)や18歳未満の子がいる場合に、退職年金の50%相当額を家族年金として受け取ることが出来ます。
- 退職年金及び家族年金の受給開始年齢を62歳まで繰り上げすることが可能です。ただし、月45時間を超えて就労していないことが条件になります。繰り上げた年金は、生涯にわたって一定の率で減額されます。また、受給開始年齢を繰り下げることも可能です。その場合は一定の率で増額されます。
- その他、障害・遺族年金制度があります。また、日本の年金制度に定められる外国人のための脱退一時金制度に相当する、保険料還付制度はありません。
- 遺族に対しては、遺族年金のほかに死亡一時金制度があります。(死亡後2年以内に請求が必要)
生まれた年 |
受給開始年齢 | 退職年金の繰上げ減額率 | 家族年金の繰上げ減額率 | |
~1937年 | ~昭和12年 | 65歳 | -20.00% | -25.00% |
1938年 | 昭和13年 | 65歳2ヶ月 | -20.83% | -25.83% |
1939年 | 昭和14年 | 65歳4ヶ月 | -21.67% | -26.67% |
1940年 | 昭和15年 | 65歳6ヶ月 | -22.50% | -27.50% |
1941年 | 昭和16年 | 65歳8ヶ月 | -23.33% | -28.33% |
1942年 | 昭和17年 | 65歳10ヶ月 | -24.17% | -29.17% |
1943年~1954年 | 昭和18年~29年 | 66歳 | -25.00% | -30.00% |
1955年 | 昭和30年 | 66歳2ヶ月 | -25.83% | -30.83% |
1956年 | 昭和31年 | 66歳4ヶ月 | -26.67% | -31.67% |
1957年 | 昭和32年 | 66歳6ヶ月 | -27.50% | -32.50% |
1958年 | 昭和33年 | 66歳8ヶ月 | -28.33% | -33.33% |
1959年 | 昭和34年 | 66歳10ヶ月 | -29.17% | -34.17% |
1960年~ | 昭和35年~ | 67歳 | -30.00% | -35.00% |
■退職年金受給のための手続き
退職年金の手続きは、「受給開始年齢到達月の3ヶ月前の初日」から申請をすることができます。
遡っての請求が認められる期間は、「申請日から6ヶ月間(障害年金は最高1年)」です。
退職年金の請求は、次の書類を用意して年金事務所に請求します。
【用意する書類】
・アメリカ年金の請求申出書
・戸籍抄本又はパスポートの写し
※配偶者・子がいる場合:全員分の生年月日が確認できる戸籍謄本
※遺族年金の請求の場合は、死亡日が確認できることが必要
・年金手帳又は年金証書のコピー
・共済組合員等の期間がある場合は加入番号が確認できるもの
・本人及び配偶者のアメリカ社会保障番号を確認できるものがあれば添付
■申出書類提出後の流れ
年金事務所に請求申出書を提出すると、被保険者(アメリカで就労されていた方)の年金加入記録が合衆国領事部連邦年金課(SSA)に送付されます。合衆国領事部連邦年金課(SSA)での確認作業終了後、申請者宛に連絡があり、電話インタビュー(電話での聞き取り作業)が行われます。電話インタビューは日本語または英語(申請者様が希望される方の言語)で行われます。年金加入記録が大使館に到着してから、電話インタビューのご連絡までに半年程度を要する場合があります。
審査後、SSA Baltimoreから決定通知が届きますが、電話インタビューの審査が終了し結果がでるまでにも数ヶ月かかります。
■FAQ
Q:社会保険番号を忘れた場合でも申請は可能ですか。
アメリカ側で調べてもらえます。場合によっては社会保険番号取得のため(主に配偶者)米国大使館または領事館で面接証明(Mandatory Interview Certificate)を受けるよう指示があることがあります。
Q:電話インタビュー終了後どれくらいで年金が振り込まれますか。
電話インタビュー後も審査があり、数ヶ月かかります。
Q:誕生月以後から支給決定期間までの年金については、初回年金振り込みの時にまとめて振り込まれるのでしょうか。
その通りです。本来の受給開始月である受給開始年齢の誕生月以降分については、遡って振り込まれます。
Q:年金の振り込みは毎月ですか、それとも日本と同様に2ヶ月おきでしょうか。
毎月振り込まれます。
Q:年金事務所で年金申請手続き後、電話インタビューまでに半年程度の期間を要するとのことですが、誕生日を過ぎた場合は誕生日まで遡及して年金を受け取ることができますか。
受け取ることができます。
Q:電話による聞き取りに際して、事前に日時等について連絡はありますか。
あります。担当者から電話、もしくは書面で連絡があります。電話で連絡が取れなかった場合は、書面で通知が送られてきます。
■まとめ
アメリカ年金制度の概要と申請の流れについて解説しました。アメリカでの就業経験がある方の中には、年金のことが自分と無関係だと思っていたり、お忘れになっている方もいるのではないかと思います。年金を受給できる場合でも、申請がなければ年金は自動的に振り込まれることはありません。今まで支払ってきた年金保険料が掛け捨てになってしまうことがないよう、一度ご確認をされてはいかがでしょうか。