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“多様な働き方時代”に必要となる公正な人事評価手法とは?

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多様な働き方が普及する現代において、公正な人事評価制度の構築は大きな課題となっています。従業員のスキルや能力、組織への貢献度を評価し、それを報酬や待遇に反映する人事評価制度は、企業の成長と従業員のモチベーション向上に欠かせない要素です。特に、適材適所の人員配置や不満の解消に寄与するため、人事評価制度の見直しが重要視されます。本稿では、多様な働き方時代に求められる人事評価の手法や動向について事例を交えて解説します。

1.働き方の多様化とその影響
2.公正な人事評価制度の構築
3.具体的な評価手法
4.実際の企業での適用事例
5.まとめ

■働き方の多様化とその影響

リモートワークや週休3日制、WFA(Work From Anywhere at Anytime)、自由選択休暇などなど、働き方の多様化は急速に進んでいます。この変化によって、従来の評価手法では見落とされがちな部分が増え、公正な評価を行うことが難しくなってきています。そのため、多様な働き方に対応するためには、人事評価制度も進化させる必要があります。この背景には、従業員のモチベーションを高め、組織への帰属意識や成長を促進するための適切な評価が必要であるという、人的資本経営の推進ともリンクする重要なポイントが含まれています。

多様な働き方に対応する人事評価手法の必要性

・従来の評価手法の課題

従来の人事評価手法は、主に固定された労働時間や働く場所、全員一律な働き方を前提としたものでした。このため、多様な働き方が広がる現代においては、適切な評価が難しくなったという課題が浮き彫りになっています。例えば、リモートワークやフレックスタイム制を採用している従業員と、従来のオフィス勤務で決まった始業終業時刻で勤務する従業員とを同じ基準で評価すると、不公平感が生じやすいです。
また従来の評価手法は、業務の成果を把握しにくい職種や役割に対しては適用が難しい場合が多く、総合的な能力評価や情意評価が疎かになりがちでした。これにより、従業員のモチベーションが低下し、組織への帰属意識も薄れてしまうことがあります。こうした背景から、従来の人事評価手法の課題を克服する必要性が求められています。

・評価手法の進化

多様な働き方に対応するために、人事評価手法の進化も見られるようになってきました。具体的には、能力評価、成果評価、情意評価の3要素をより細かく組み合わせ、総合的かつ公正な評価が行えるように工夫するような形です。従来的なMBO(目標管理制度)と短期的な成果を評価するKPI、360度評価などを組み合わせ、個々の従業員の役割や働き方に応じた柔軟な評価を実現するような会社も増えてきました。
さらに、評価の過程において透明性と公平性を確保するため、評価基準の明確化や適切なフィードバックの提供が重要視されています。これにより、従業員は自身の評価内容を理解しやすくなり、納得感を得ることができます。評価手法の進化は、結果として従業員のモチベーション向上や組織全体の成長につながっています。

公正な人事評価制度の構築

評価基準の明確化

公正な人事評価制度を構築するためには、評価基準の明確化が欠かせません。従業員のスキルや能力、組織への貢献度を客観的に評価できる基準を設定することが重要です。この基準が曖昧であったり、曖昧な部分が多いと、評価の公正性が損なわれ、不満が生じる可能性があります。したがって、明確な評価基準を設けることで、誰が見ても納得できるような評価を行うことができます。

・透明性と公平性の確保

人事評価制度の透明性と公平性を確保するためには、評価プロセス自体をオープンにし、評価結果のフィードバックを従業員に提供することが重要です。これにより、従業員は自分がどのように評価され、どのような点で改善や成長が必要かを把握することができます。また評価に関する基準や方針を分かりやすく伝えることで、公正の維持が図られます。公正性を確保するための努力が積み重ねられることで、組織全体の信頼感が向上するでしょう。

具体的な評価手法

多様な働き方が進む現代において、公正な人事評価を実現するためには、具体的な評価手法の導入が欠かせません。以下では、代表的な評価手法であるKPI(成果評価)、360度評価、MBO(目標管理制度)について詳しく説明します。

KPI(成果評価) KPI(Key Performance Indicator)は、組織や個人の目標達成に向けた重要な指標を設定し、それに基づいて従業員の成果を評価する手法です。長らく定量的な営業利益や売上、いわゆる業績成果を評価する手法として活用されていましたが、幅広い成果指標を用意することで従業員の動機付けにつなげる活用も増えています。具体的には、従来評価基準や貢献として利用されていなかった間接的な貢献や行動を業績につながる重要なKPIとして評価し、定期的にその達成度を測ることで、組織全体のパフォーマンスを向上させるような取り組みです。
360度評価 360度評価は、従業員をその上司、同僚、部下、さらには外部のステークホルダーから評価する手法です。多角的な視点からの評価を取り入れることで、公正性や透明性が向上しやすくなります。さらに、従業員自身の強みと弱みを幅広く把握できるため、スキル開発やキャリアプランの策定にも役立ちます。この評価制度は、特にリーダーシップやコミュニケーション能力を評価する際に有効です。最近では組織のサイロ化を防ぐための取り組みに活用されるような事例も出てきています。
MBO(目標管理制度) MBO(Management by Objectives)は、従業員とその上司、従業員と組織が協力して個別の目標を設定し、その達成度を評価する手法です。目標の設定には具体性や達成可能性を重視し、定期的に進捗を確認します。これにより、従業員は自分が何を達成すべきかが明確になり、自身の成長を促進しながら組織の目標達成に貢献できます。MBOは現代においても有効な制度ですが、経営戦略と人材戦略との連動、個人と会社のベクトルを共通化するために、より高度なアプローチが求められています。

実際の企業での適用事例

・成功事例

ある企業では、従来の一方的な能力評価や業績評価だけでなく、360度評価を導入しました。この手法では、上司だけでなく同僚や部下からもフィードバックを受けることができるため、組織貢献について公正な評価が実現されやすくなります。多様な働き方の下では、同じ職務であっても成果や貢献のアプローチが変わってしまうため、どうしても「残業しているから貢献している」「少ない労働時間で成果をあげている」などの働き方による比較が生じてしまいやすくなります。
このような評価制度の見直しにより、お互いの成果や貢献を認め合うことで従業員たちのモチベーションが向上し、組織全体の生産性が劇的にアップするような事例もあります。

失敗事例

一方で、人事評価制度の見直しがうまくいかないというケースも見受けられます。例えばテレワークなどの多様な働き方の導入と同時に、能力や成果を重要視する成果主義の評価制度に変更したところ、先ほどの事例とは反対にテレワークをしている従業員としていない従業員との間で能力評価に偏りがあり、そのため一部の従業員が不満を抱いてしまうようなケースです。評価制度を導入する際には、分配的公正、手続き的公正、対人的公正、情報的公正のバランスを取ることが重要です。多様な働き方を認めることと同時に、働き方に影響されない適切な評価制度になっているかどうか、その評価手続きや運用、伝え方にも注意が必要です。

■まとめ

未来の働き方は、多様化と柔軟性が一層進むことが予測されます。これからも個々の従業員がそれぞれのライフスタイルに合わせた働き方を選択できるように進んでいくことでしょう。そのため、人事評価制度もこれらの多様な働き方に対応できるよう進化する必要があります。
生成AIなど急速なテクノロジーの進化により、仕事自体の価値も目まぐるしく変化しています。従来であれば3~5年ごとに見直されていたような人事制度も、1年やもっと早い期間で、働き方とそれに連動する評価制度の見直しを迫られるようなケースも増えてきています。多角的なトレンド把握や未来予測を、スピード感を持って早いサイクルで行っていく必要が出てきています。
多様な働き方時代に対応していくためにも、人事評価制度のお悩みや見直しは専門である社会保険労務士にご相談ください。
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