新しい働き方?労働者協同組合法が成立!
12月4日、臨時国会において「労働者協同組合法」という法律が成立しました。現状の労働法では「使用者」と「労働者」は明確に役割が分けられておりますが、この法律によって新たに法制化された労働者協同組合は、組合員が「出資・経営・労働」を三位一体とした役割を担い、収入だけではなくやりがいや満足感を得ることも目的とするもので、多様な働き方や新たな雇用機会を創出する効果が期待されています。この労働者協同組合法について、ポイントを解説します。
1.労働者協同組合法のポイント
2.労働法制による保護はどうなる?
3.まとめ
■労働者協同組合法のポイント
労働者協同組合法では、次のような基本原理が定められています。
労働者協同組合法 第3条第1項
組合は、次に掲げる基本原理に従い事業が行われることを通じて、持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とするものでなくてはならない。
1 組合員が出資すること
2 その事業を行うに当たり組合員の意見が適切に反映されること
3 組合員が組合の行う事業に従事すること
このことが、前述の組合員は「出資・経営・労働」を三位一体として、自ら組合の事業に出資して働き、運営にも関与するということを示しています。働く人が主体となって社会や地域に役立つ活動を協同して起こし、事業に発展させることを目指す場合に、現状は足枷となってしまうことがありました。例えば法人格を形成しなければならない場合に、企業組合法人やNPO法人が活用されていますが、企業組合は営利法人となり、NPO法人では出資が受けられないという不利な点があります。また組合と組合員の間に「雇用関係」が生じてしまうことにより、出資や経営の部分で主体的な役割を担うことが出来ないという不都合も生じます。株式会社とは異なる労働者協同組合という新しい事業体が設けられることにより、これらの課題解決が期待されています。
■労働法制による保護はどうなる?
「出資・経営・労働」の役割が分離されていないことにより、組合員が組合の運営に携わると労働者としての性質を否定され、公的保険等の労働法制による保護が受けられない、最低賃金を無視して低賃金での労働を強いられる、というような懸念は想定されていました。そのため労働者協同組合法は、組合は組合員と労働契約を締結することを義務付け、労働者と同様の保護が受けられるように定められています。そのため労災保険や雇用保険は、組合を使用者、組合員を労働者とみなし適用されます。地域ボランティアとして協力する人も労災保険の給付が受けられるようにすることができるのも大きな特徴です。
■まとめ
労働者協同組合は、定款で定めることにより利用者や地域の方、団体も組合員になることができます。地域が抱える介護、福祉、子育て支援、街づくりといった様々な課題を解決するために、利用者や地域の方も主体的に協同して取り組むことは重要となりますので、労働者協同組合は地域振興や、働きがいのある社会の実現に活用されていくでしょう。
新型コロナウイルスの感染拡大により、経済情勢や雇用環境の悪化は今後も懸念されていますが、新しい雇用の受け皿としても利用されていくかもしれません。副業・兼業、従業員のフリーランスや業務委託化、高年齢者の就労機会確保等、働き方の多様化がどんどん広がっていく中で、労働者協同組合という働き方も、新しく注目されるでしょう。