新型コロナウイルスの影響で、従業員を会社都合で休ませたケースが多く発生しました。
休業手当を100%支給した会社もありますが、それでも従業員の賃金が下がっているケースが多いと思われます。
5月の所定外給与が前年同月比で約25%減少したというデータもでています。
休業と残業減で結果として月の賃金が大きく下がってしまった方もいたのではないでしょうか。
景気が悪化したり、賃金が下がった時に、通常以上に気になるのが社会保険料の負担です。
今回新設された”標準報酬月額の特例改定”は、コロナウイルス影響の休業によって賃金が大幅に減った月の翌月から、社会保険料を下げられるという制度です。
対象期間は2020年4月から7月までの間の1か月です。
◆特例改定の対象になる条件は?
3つの要件を満たす必要があります。
要件について日本年金機構のHPから抜粋します。
(1)事業主が新型コロナウイルス感染症の影響により休業(時間単位を含む)させたことにより、急減月(令和2年4月から7月までの間の1か月であって、休業により報酬が著しく低下した月として事業主が届け出た月)が生じた方
(2)急減月に支払われた報酬の総額(1か月分)に該当する標準報酬月額が、既に設定されている標準報酬月額に比べて、2等級以上下がった方
※ 固定的賃金(基本給、日給等単価等)の変動がない場合も対象となります。
(3)特例による改定を行うことについて、本人が書面により同意している方
※ 被保険者本人の十分な理解に基づく事前の同意が必要となります。(改定後の標準報酬月額に基づき、傷病手当金、出産手当金及び年金の額が算出されることへの同意を含みます。)
※ 本特例措置は、同一の被保険者について複数回申請を行うことはできません。
貼り付け元 https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2020/0625.html
◇見るべきポイントは?
上記の文章の中でポイントとなる部分について解説をします。
・新型コロナウイルスの影響により休業させたことにより
感染予防などの目的から、従業員の希望で欠勤をしただけの場合は対象外です。
あくまでも会社が出勤しない旨を命じたという事実が必要となります。
・固定的賃金の変動がない場合も対象
通常の月変、随時改定とは全く違う点です。
賃金が下がった理由がコロナによる休業であれば、その賃金の内容については条件がない、ということになります。
月の半分が休業となり、休業手当一日あたり60%を支給、交通費減額、残業手当無し…結果賃金大幅減。
このようなケースを対象にできるイメージです。
・本人の同意が必要
社会保険料が下がると厚生年金の掛け金も下がり、将来受け取ることができる厚生年金の額も減少します。
そのほか標準報酬月額を計算の基礎とする傷病手当金や出産手当金も、受け取り額が下がります。
半年後に産前休暇に入る見込みの方など、社会保険料は現在の水準を保っていたい方もいるはずです。
そのため本人の同意なしに事業主の独断で特例適用をすることはできません。
◇通常の月給社員ではない場合はどうなる?
誰でも対象にできる訳ではないことが分かりました。
通常の月給社員でない場合はどうなるのでしょうか。
・時給や月給の方も対象になるの?
月給社員と同様に対象になりえます。
ただ月給社員以上に注意すべき点があります。
急減月以前の月(前2か月)につい ても、給与計算の基礎日数が 17 日以上であることが必要、という要件が定められている点です。
普段から月の勤務日数が17日未満で推移している方は、対象外となってしまいます。
ただこの17日には、事業主からの休業命令や自宅待機命令があった日も含めることができます。
そのため該当の方は合算して判断をすることになります。
労働者自らの判断で欠勤した場合やシフトを入れなかった日は、17日カウントの際に含めることができません。
・役員は対象になるの?
対象となりえます。
従業員に休業を要請しながら自らの役員報酬も減額改定したケースが考えられます。
ただ、未払い計上して翌月以降に繰り越しているだけの場合は対象外のためご注意ください。
いかがだったでしょうか。
コロナ禍の最中に公表されたため、見落としている方もいらっしゃるのではないかと思い記載しました。
5月で特例の対象だった!すでに給与計算も終えてしまった!という場合も、問題ありません。
対象の月に遡って手続きをすることができます。
ご本人と会社どちらにもメリットとなる場合があります。
ぜひ一度対象の社員がいないか確認をすることをお勧めします。
大熊