外国人労働者を抱える企業向け~年末調整~
2019.10.17 その他ビジネスの話
肌寒い日が続き、ようやく秋めいて参りました。皆様体調は崩されてませんか。
外を歩くにはジャケットが必要になるこの時期から、バックオフィスは慌ただしくなってきます。
毎年恒例、年末調整の季節です。
今回は、外国人労働者を擁する会社の年末調整についてご案内いたします。
◇その前に…年末調整とは
聞かれた時にさっと説明できますか?
年末調整という仕組み自体が存在しない国も複数あるため、そもそも制度自体よくわかっていない外国人労働者もいます。
かんたんに復習しておき、説明できるようになりましょう!
年末調整を端的にいえば、今年1年間で発生した所得税の精算作業のことです。
多くの方は毎月の給与から所得税が引かれていますが、あの数字はあくまで概算。
正確な所得税を計算するためには、毎月の給与額以外にも様々な要素が必要になります。
たとえば被扶養者の数、支払った各種保険料や住宅ローン、仕事以外の収入など。
毎月徴収している概算の所得税は、ある程度多めの金額が引かれるようになっています。
所得税を算出する正確な計算式を立てるために必要な情報を提出してもらう作業、とも言えそうです。
以上を踏まえて、外国人労働者の年末調整にあたり気をつけるべきポイントを3つご紹介します。
◇年末調整チェックポイント_外国人労働者向け
1、本人の理解度はどのくらい?
上に書いた内容と重なりますが、日本人が読んでも難解な年末調整資料、あまり理解していない方がいらっしゃいます。
英語版のチェックリストを作ったり、少し早めに書類を渡してどの程度理解されているか確認してみてはいかがでしょうか。
また各書類に押印欄がありますが、ハンコを持っていないからという理由で空白のまま提出される方がいます。ハンコが無い外国籍の方には、手書きサインを記入してもらうよう事前に案内しておきましょう。
2、引越してませんか?
本人が住民票を移しているか念のため確認しておきましょう。
在留カードを持つ方が住所変更をした場合であっても、再び入国管理局に出向く必要はありません。転居先の市区町村にて、転入書類提出時に在留カードを合わせて提出するだけで大丈夫です。
転入手続き自体は簡単である一方、英語の対応が不十分な市区町村もまだあります。手続きについて不安な部分が無いかどうかを本人に直接聞いてみるのもよいかもしれませんね。
3、国外居住親族を税法上の扶養に入れたい
祖国に残る家族を扶養として申告する場合、証明するための書類が別途必要なので注意してください。
2種類の書類提出を促す必要があります。
本人と扶養控除対象者の続柄を証明する「親族関係書類」と、お金を送っていることを証明する「送金関係書類」です。内容について国税庁のHPから抜粋します。それぞれ①、②のいずれかが必要です。
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・「親族関係書類」
① 戸籍の附票の写しその他の国又は地方公共団体が発行した書類及び国外居住親族の旅券(パスポート)の写し
② 外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類(国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものに限ります。)
・「送金関係書類」
① 金融機関(注)の書類又はその写しで、その金融機関が行う為替取引により居住者から国外居住親族に支払をしたことを明らかにする書類
② いわゆるクレジットカード発行会社の書類又はその写しで、国外居住親族がそのクレジットカード発行会社が交付したカードを提示等してその国外居住親族が商品等を購入したこと等により、その商品等の購入等の代金に相当する額の金銭をその居住者から受領し、又は受領することとなることを明らかにする書類
(注) 金融機関には、資金決済に関する法律第2条第3項に規定する資金移動業者も含まれます。
*国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)より
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「親族関係書類」はパスポート以外は原本が必要で、かつ日本語訳をつける必要があります。
本人は英語を話しているけれど、祖国発行の書類は英語でない可能性もあります。その際の日本語訳作成は手間がかかる可能性があるため、早めに用意をしてもらい確認しておきましょう。
また時々あるのですが、親族の運転免許証だけ、などでは足りません。免許証には親族本人の情報しか記載がなく、労働者との関係性がわからないからです。
「送金証明」に関して、送金額や送金回数がどの程度必要なのかという点は、国によって状況が異なることもあり明言されていません。国税庁の案内では、生活費または教育費に充てるための支払いを必要の都度行っているか、という表現になっています。
そのため、送金は年に一回だけで金額は数万程度というような少額の送金証明の場合は、どのような目的の送金なのか明確にしていただく必要があります。
日本人にとっても難しい年末調整、外国の方にとってはなおさらややこしく感じる方が多いと思われます。国外居住親族などの様に、日本人ではあまり発生しないケースも起こり得ます。
より早め、より丁寧な案内をしてサポートすることで、スムーズに年末調整を乗り切りましょう。
優秀な外国人労働者とより緊密な信頼関係を築く、一つの大きなきっかけにもなるはずです。
大熊