1/fのゆらぎ・・・☆彡
2018.06.22 労働・雇用関係
日毎に鮮やかさをます紫陽花が梅雨の鬱陶しさを吹き飛ばしてくれるこの頃です。
皆様如何お過ごしでしょうか。
さて、前回のブログでは、定年再雇用時の賃金にかかる件で、「定年後の極端な労働条件悪化は、65歳までの継続雇用を義務付けた高年齢者雇用安定法の趣旨に反する」という内容の判決についてご案内いたしましたが、今度は去る6月1日に浜松市の物流大手『ハマキョウレックス』と横浜市の運送会社『長沢運輸』の訴訟で非正規待遇格差かかる企業の均等・均衡待遇を重視した「同一賃金」への動きを後押しする日本初の最高裁判決がなされましたので、今後企業様に求められてくる実務対応について簡単にご案内したいと思います。
この訴訟は、何れも有期・無期契約労働者間の不合理な労働条件の相違を禁止した労働契約法20条に関連しています。最高裁の判決のポイントは(1)均等・均等待遇が実現されていない場合は不法行為となる。(2)正社員を厚遇することで有能な人材を確保し、長期勤続のインセンティブとすることが認められなかった。(3)2016年12月に公表された「同一労働同一賃金ガイドライン(案)に沿うものが多かった。の3点です。
その中で特に上記(1)の確認のために企業様の実務対応として求められることは、先ず各種手当が何のために、何に対して支給されるものかその趣旨と性質の確認⇒次にその趣旨・性質は無期社員と有期社員に同様に及ぶものかどうかの確認⇒そして、もし同様に及べば均等待遇、及ばなければその違いに応じた均衡待遇となっているかを順に検証することです。
ハマキョウレックス訴訟では、無期社員にだけ支給されていた無事故手当(安全輸送による顧客信頼確保)、作業手当(特定作業への対価)、給食手当(食事費補助)、通勤手当(通勤費補填)、皆勤手当(業務円滑化)について、有期社員への不支給または低額支給について不合理とされました。ただし、住宅手当(住宅費補助)についてだけは、転勤が予定される正社員のみへの支給について合理性があると判断されました。ただし、この合理性の判断にあたっては、上記(2)にかかる従来の有能人材確保目的ではなかったことに注意が必要です。
最後は、定年度再雇用の賃金減額の適法性についてです。企業様が今後、気をつけなければならない点は、第一に最高裁の判決により、今まで社会的に広がっている再雇用時の賃金の減額という慣行は容認されなくなります、第二に定年度再雇用であることと関係のない手当等については支給することが求められます(例:皆勤手当(皆勤奨励目的のため)、通勤手当(通勤目的のため))、第三は定年後再雇用に関連する賃金項目について個別の事情の違いに応じた均衡待遇が求められ、この均衡を判断する場合、労使交渉の過程や賃金制度の設計の仕方なども考慮される場合がある、ということです。
長沢運輸訴訟では、労使交渉により、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢まで月額2万円の調整手当を支給するなど配慮や工夫をしていたという事情が考慮され、基本給相当部分は1割前後、賞与を含めた賃金全体で2割程度の減額は不合理ではなく、均衡がとれていると判断されました。よって、丁寧な労使交渉と賃金制度上の配慮、工夫のもと、定年後再雇用者の賃金が定年前の社員と均衡がとれた範囲に収まっているか検証し、均衡が取れていない場合は賃金制度の見直しを図るなど早急な対応が求められてきますので、何かお困りごとがありましたら、ぜひ当法人にお気軽にご相談下さい。
最後に・・・昨日は、夏至でした。夏至の世界的なイベントにキャンドル・ナイトがあります。キャンドルの灯には、1/fゆらぎ(エフぶんのいちゆらぎ)と呼ばれるヒトの心拍や川のせせらぎ、鳥のさえずりと同じリズムがあり、それが癒しの効果になるそうです。皆様も是非、夏至から七夕までの夜間、キャンドルの灯りの中で思い思いの時を過ごされてみては、如何でしょうか?
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。Homma:)